トイレ・更衣室は生物学的性別に基づく利用を、ジェンダー中立空間の必要性も明記 英平等委が新指針

トイレの案内表示板。男性、女性、赤ちゃん、車いす利用者のアイコンが並んでいる

画像提供, Getty Images

Published
この記事は約 6 分で読めます

アリソン・ホルト社会問題編集長、ニック・トリグル保健担当編集委員

イギリスの平等人権委員会(EHRC)は21日、公共の場所や商業施設などの更衣室やトイレといった単一性別空間は、生物学的性別に基づいて利用されるべきだとの指針を発表した。同時に、トランスジェンダーの人々には、第三の空間かジェンダー中立の空間が提供されるべきだとしている。

EHRCの実施指針は、団体や企業、一般向けサービスがどのように施設を整備するべきかを示すもの。対象はショッピングセンターやジム、病院、レストランに至るまで幅広い。

同指針は現在、政府の承認を経て議会に提出されており、上下両院は40日以内に異議を唱えることができる。異議がなければ、そのまま法的拘束力を持つものとなる。

ブリジット・フィリップソン女性・平等担当相は、この指針の目的は、人々が差別や嫌がらせのない生活を送れるようにすることだと説明。「組織が法律の実施について明確で利用しやすい指針を確実に持てるように、私たちは常にそこを重視してきた」と述べた。

新しい実施指針によると、例えばトランス女性は、女性用トイレや更衣室を使用するべきではない。

一方で指針は、トランスジェンダーの人々には、第三の空間かジェンダー中立の空間が提供されるべきだと明記。こうした人々が、いかなるサービスや施設にもアクセスできない状態に置かれることは、適切とは見なされず、差別となる可能性があるとしている。

指針はまた、ジェンダー中立のトイレや更衣室は、床から天井までの壁で仕切られ、施錠可能で、洗面台を備えた独立した区画を設けるべきだと勧告している。

EHRCは、この要件が施設などに過度の負担となるとは考えておらず、例えばトランスの人々に障害者用トイレの利用を認めることを選択できると述べた。

また、仮にトイレが二つしかなく、男性用と女性用がそれぞれ一つずつの場合は、それを男女共用に変更することも可能だとも述べた。

イギリスの最高裁判所は昨年4月、2010年制定の平等法における「女性」は生物学的性別で定義されるという判断を下した。

EHRCは昨年9月に、300ページを超える新たな実施指針を政府に提出。当初は、政府の精査期間は6週間ほどで、その後に修正を求められるか、議会に提出されるかだと見込んでいたという。

しかし政府は、この問題に「徹底的かつ慎重に」対応するとして、指針の公表までに8カ月を費やした。

EHRC委員長のメアリー=アン・スティーヴンソン博士(平等法)は、この指針を「先入観のない姿勢」で読んでもらうよう期待していると述べた。

「議論をさらに広げる必要があると思う。そして、すべての人が必要なサービスに確実にアクセスできるようにするには、どうすればいいかという点から、出発する必要がある。必要としているサービスは、人によって違うはずだ」と同氏は述べた。

ブリストルの文化施設「ウォーターシェッド・アーツ・シネマ」のクレア・レディントン最高経営責任者(CEO)は、指針の公表に時間がかかりすぎたことで、混乱や誤情報が生じたと述べた。

レディントン氏は、この遅れでトランスの人々が受けた影響は「有害」だったとも指摘。こうした人々は、「自分たちが完全な公共生活を送ることができる」ために、この指針がどのような意味を持つのかを早く知りたがっていたという。

ウォーターシェッドはジェンダー中立のトイレを設置しており、2024年に「年間トイレ賞」を受賞している。

同館のジェンダー中立トイレでは、個室はカラフルに彩られ、個室のドアは床から天井まで届く。内側に洗面台が設置されている個室もある。また、男女別のトイレも別途それぞれ設けられている。

レディントン氏は、「すべての人のためにトイレを設計することは、ビジネスにとって最高の判断だ」とも話す。

短髪でめがねをかけた女性が立っている。背後の壁にはレインボーカラーのハートが描かれ、その下に英語で「私たちのトイレはすべての人に」という標語が書かれている

画像提供, Other

画像説明, 「ウォーターシェッド・アーツ・シネマ」のクレア・レディントン最高経営責任者(CEO)。背後の壁には「私たちのトイレはすべての人に」と書かれている

「権利の縮小」とトランス権利団体

生物学的な性別を重視する女性権利団体「セックス・マターズ」のマヤ・フォーステイター氏は、「ついに、『指針を待っている』と言って違法な方針の是正を先送りしてきた多くの公共・民間部門の組織が、もう言い訳できなくなった」と述べた。セックス・マターズ(sex matters)とは、「性に関すること」と「性別は大事」という二重の意味。

「トランスのロビー団体を怒らせるよりはと、これまで法律に違反してきた組織は、新しい指針を政府が長らく議会に提出しないことを、隠れみのにしてきた」

「新指針は長文で詳細だが、その核心には単純な原則がある。すなわち、『性別』とは文字どおりの意味であって、男性と女性だということだ。その人が自分をどう呼んで、どういう服装をしても、その人の性別は変わらない」

「女性を自認する男性に女性用の空間の利用を認めたり、あるいはその逆を認めたりするなど、誤った方向に進んだ企業、慈善団体、または公共サービス提供者は、今すぐ自らの方針を是正しなければならない」

一方、トランスジェンダーの権利擁護団体「トランス・アクチュアル」のメディア担当者は、この指針はトランスの人々の権利を縮小させると述べた。

「この新指針は、トランスジェンダーの人の権利と尊厳を保護できていないだけでなく、LGBTコミュニティー全体に対する保護を弱めているように見える」と、この担当者は述べた。

「トランスアクチュアルは、すべてのトランスの人々が公共生活に平等にアクセスできるようにするため、闘いを継続し、新たな指針について十分に精査した後、見解の全文を公表する」とも話した。

アーウィン・ミッチェル法律事務所のジョアン・モーズリー氏は、企業やサービスから、対応について頻繁に助言を求められると述べた。

モーズリー氏は、明確な案内表示と、適切な場合にはジェンダー中立の空間を確保することが重要だと考えている。

同氏によると、昨年の最高裁判断の直後に、施設に変更を加えた企業や雇用主もいる一方、EHRCの指針が施行されるまで何も行わず、変更を先送りしている例もあるという。

しかし同氏は、EHRCの指針は「万能の解決策」ではなく、仮に誰かが組織に対して差別の訴えを起こした場合、「指針を待っている」と述べても弁明にはならないと警告した。