ロシアと中国、キューバ元指導者を起訴した米国を非難 米長官はキューバは「安全保障上の脅威」

画像提供, Getty Images
中国とロシアは21日、キューバのラウル・カストロ元国家評議会議長を殺人共謀罪などで起訴したアメリカを非難した。他方、ドナルド・トランプ米大統領は「人道的」観点からのキューバ「支援」に意欲を示した。マルコ・ルビオ米国務長官は、キューバはアメリカにとって「国家安全保障上の脅威」だとし、米政権は常に外交による平和的解決を優先するものの、キューバ相手にその可能性は「高くない」と記者団に述べた。
中国外務省は21日、中国と同盟関係にある国への「威圧」や「脅し」をやめるようアメリカに求めた。クレムリン(ロシア大統領府)は、キューバ政府に対して加えられている圧力は「暴力に近い」と述べた。
アメリカは20日、南部フロリダ州とキューバの間を飛行していた航空機2機が撃墜され4人が死亡した1996年の事件をめぐり、当時キューバの最高指導者だったカストロ氏を、アメリカ人殺害共謀などの罪で起訴したと発表した。
トランプ大統領は以前から、キューバに圧力をかける姿勢を繰り返し示しており、その共産主義体制の転覆について公然と語ってきた。アメリカはこれまでに追加制裁を科し、キューバ向けの石油輸送を事実上封鎖している。このためキューバでは燃料危機が深刻化し、長時間の停電や食料不足が生じている。
クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は21日、ロシア国営メディアに対し、カストロ元議長の起訴など、アメリカがキューバに圧力をかけ続けている動きは「容認できない」と述べた。
「どのような状況だろうと、暴力に近いこうした手段が、過去や現在の国家元首に対して用いられるべきではないと、我々は考える」とも報道官は付け加えた。
これに先立ち、中国外務省の郭嘉昆報道官は、中国は「キューバを断固として支持する」と強調した。
また、「どのような口実があろうと、外部勢力がキューバに圧力をかけようとすることに、(中国は)反対する」と述べた。
郭報道官は、「アメリカは制裁や司法を脅しの道具として使うのをやめ、ことあるごとに実力行使を脅しかけるのをやめるべきだ」とも話した。
米司法省は2機撃墜に関与したとして、カストロ元議長を含め計6人を起訴した。罪状の最高刑は終身刑または死刑。
1996年の事件では、キューバ系アメリカ人の反体制団体「ブラザーズ・トゥ・ザ・レスキュー」の航空機2機がキューバとフロリダ間を飛行中に撃墜され、アメリカ人3人を含む4人が殺害された。カストロ氏は当時、軍の最高司令官で、撃墜について国際的に非難された。
アメリカ国内のキューバからの亡命者はこの事件に強く反発。両国はこの事件をめぐり、長年にわたり対立してきた。
カストロ氏は2018年に国家評議会議長を引退し、2021年には共産党トップの第1書記も引退した。
カストロ氏の後任となったミゲル・ディアス=カネル大統領は、アメリカによる起訴を「法的根拠のない政治的な動き」と批判した。
トランプ氏は今年1月にヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領(当時)を拘束して以降、キューバについて「崩壊寸前だ」と公言してきた。
トランプ政権は、司法省がマドゥロ氏を起訴していたことを、ヴェネズエラ急襲と大統領夫妻拘束の根拠にした。夫妻は現在、ニューヨーク市内で拘束されており、麻薬密売などの罪で裁判を受ける予定。
「人道的な観点」とトランプ氏
トランプ氏は21日にはホワイトハウスで、キューバは「破綻した国」であって、自分の政権は「人道的な観点」から支援しようとしているのだと述べた。
「過去の大統領は50年、60年と、何をどうしようか検討してきたが、実際になんとかするのは自分になりそうなので、喜んでそうする」とトランプ氏は話した。
さらに、「キューバ系アメリカ人が祖国に戻り、(キューバを)助けられるよう」に、アメリカとしてキューバを開放したいのだとも話した。

画像提供, Reuters
ルビオ米国務長官は21日、トランプ政権がカストロ元議長をマドゥロ夫妻のようにアメリカに連行して裁判にかけるつもりかどうかについてはコメントを控えた。
ルビオ氏はフロリダ州で記者団に対し、1996年に飛行機撃墜を命令したことを、元議長が「公然と認め、誇っている」と述べた。
キューバでの体制転換のために武力行使する可能性があるのか質問されると、ルビオ氏は、トランプ政権は外交による平和的な解決を常に優先するとしたうえで、「正直に言って、我々がいま誰を相手にしているのかを思えば、(外交的解決の)可能性はあまり高くない」とも述べた。
ルビオ氏は、キューバは「常に」アメリカの国家安全保障にとって脅威だと主張し、「キューバは国内に、ロシアと中国の情報活動拠点を置いている」と述べた。さらに、キューバは「地域全体でも有数のテロ支援国だ」と批判した。
そのうえで長官は、「もしもアメリカ合衆国の国家安全保障に対する脅威があるなら、大統領にはその国家安全保障上の脅威に取り組む権利があるだけでなく、そうする義務がある」と強調した。
長官は20日にはスペイン語で、キューバ国民に向けたメッセージを発し、トランプ政権は「新しい道を提示している」のだと主張。キューバの腐敗した体制を、キューバ系アメリカ人が享受するような自由と引き換えるものだと述べていた。
ルビオ長官のこうした主張に対し、キューバのブルーノ・ロドリゲス外相はソーシャルメディアで、ルビオ氏の発言は「うそ」だと非難。「長官はまたしてもうそをつき、キューバ人とアメリカ人の流血につながる軍事侵攻を引き起こそうとしている」と書いた。
外相は、キューバがアメリカにとって脅威だったことなど一度もなく、「米政府こそが、キューバ国民を無慈悲かつ組織的に攻撃」し続け、数カ月にわたる燃料禁輸や封鎖を通じて「キューバ国民の絶望感を高め、キューバ経済を崩壊させようとしている」とも主張した。
外相はさらに、キューバが「地域全体でも有数のテロ支援国だ」とするルビオ長官の主張についても「真実ではない」と反論。「実際にはアメリカこそが数十年にわたり、自国領からキューバに対するテロ行為の計画と実行を容認」し、「テロリストをかくまってきた」と主張した。
キューバ当局はここ数カ月、アメリカとの協議を続けているが、ホワイトハウスはキューバ政府への圧力を増し続けている。この間、キューバに届いていたロシアからの石油は今月初めに底をついた。
トランプ大統領は今月初め、キューバ制裁を命令する大統領令に署名。制裁の対象は、エネルギー、防衛、金融、安全保障分野のキューバ当局者や、人権侵害や公的資産の不正取得に関与したとアメリカが主張する個人だった。
アメリカはキューバ周辺での監視飛行も増加しているとされる。米中央情報局(CIA)のジョン・ラトクリフ長官が14日にキューバの首都ハバナを訪れた際には、キューバが「これ以上、敵対勢力にとっての安全な拠点であってはならない」と述べていた。
キューバは最近まで、ヴェネズエラのマドゥロ政権など地域の同盟国から支援を受けることで、西側諸国の厳しい制裁に対応していた。マドゥロ氏の拘束前には1日およそ3万5000バレルの石油供給を受けていたとみられている。








