沖縄で広がる「またか」の声と抗議 強盗殺人事件で米海兵隊員逮捕

基地の滑走路に米軍のオスプレイ機がある。手前には民家などが見える
画像説明, 沖縄の米軍普天間基地(2022年8月、宜野湾市)
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森来実(もり・くるみ)日本特派員

沖縄のホテルの一室で女性を殺害し、持ち物を奪った疑いで、米兵が逮捕された。この事件は、米軍関係者が関わる犯罪に対して、多くの地元住民が数十年にわたって抱えている不満を、再燃させている。

「正直『またか』と思いました」。沖縄で長年暮らす佐藤あいさん(52)はBBCに話した。

「私が幼いころから何も変わっていない。何度同じことを繰り返し、被害者を増やし、その家族を苦しめるのか。そして沖縄県民を悲しませるのか」

宜野湾市に住む大城明美さん(62)も、同じような気持ちをBBCに述べた。

「慣れてしまってはいけないのに、何度も起きているので、驚かなくなっています」

沖縄は日本で最大の米軍駐留地だ。複数の基地があり、数万人の米兵が駐留している。

今回の事件では、米海兵隊上等兵のデヴィン・ジェイコブ・バラード容疑者(20)が4日、日本の警察に逮捕された。警察は、捜査が進行中だとし、容疑が軍務と無関係なことから、容疑者は日本側が勾留しているとしている。

米兵が絡む事件では、公務中かどうかで、どちらの国が優先的に裁判権をもつかが決まる。日本に裁判権がある場合でも、アメリカが容疑者を拘束している場合は、日本が起訴するまでアメリカは拘束を続けられる。

「米兵による強盗殺人事件に強く抗議する」「事件の隠蔽許さない」などと書かれたプラカードを手にした人たちが夜間、建物の間の広場に集まっている。1人がマイクを手に話している
画像説明, 沖縄では今回の強盗殺人事件に抗議する住民らが集まった(4日、那覇市)

バラード容疑者は第3海兵遠征軍の所属で、宜野湾市の普天間基地に駐留していた。

沖縄県警によると、屋宜杏奈さん(39)は3日未明、那覇市内のホテルの一室で死亡しているのが発見された。

防犯カメラの映像には、容疑者とみられる男性が女性と一緒にホテルに入った後、女性の持ち物を持って一人で出て行く様子が映っているとされる。日本のメディアは警察の話として、屋宜さんはひもで首を絞められたとみられると報じている。

高市早苗首相はアメリカに公式に抗議した。だが住民たちは、それでは全く足りないと感じている。前出の佐藤さんが言う。

「『抗議する』、『深刻に受け止めている』といった、何十年も前から繰り返されている(日本政府の)コメントに落胆しています」

「高市首相には、仲の良さをアピールしている(アメリカのドナルド・)トランプ大統領に直接電話をして、具体的な対策を話し合ってほしい」

佐藤さんはまた、沖縄に米軍基地は要らないと考えているが、外国人を排除するものではないと説明。

「(自分にも)娘がいるので、今回の被害者の親御様の気持ちを考えると胸が苦しい。男性とホテルに行ったことは断じて悪いことではありません。相手の男性がたまたま米軍人で極悪人だったのが悪いのです」と話した。

今回の事件を受け、日本では怒りの声が噴出している。那覇と東京ではそれぞれ約100人規模の抗議行動があった。ソーシャルメディアでも、強い怒りの表明や、正義を求める意見がみられる。「もうたくさんだ」といった投稿もあった。

斜め前方を見ている坊主頭の男性のアップ写真。男性の両側に警官らしき人がいる
画像説明, 強盗殺人容疑で逮捕された米海兵隊上等兵のデヴィン・ジェイコブ・バラード容疑者

沖縄ではここ数年、米兵が関係した事故や犯罪の続発を受け、駐留米軍に対する地元住民の反発が高まっている。

2016年に20歳の女性がレイプされ殺害された事件では、住民ら数万人が、米軍の大規模駐留に対して抗議した。有罪とされた元米海兵隊員には無期懲役が言い渡された。

アメリカは現在、軍関係者約5万5000人を日本に駐留させており、その大半が沖縄に集中している。沖縄は全都道府県の中で面積が最小レベルだが、在日米軍の専用施設の7割が置かれている。

第2次世界大戦後に米軍によって占領されていた沖縄は、1972年に日本に返還された。沖縄県によると、それ以降の米軍関係者が関連した犯罪での逮捕件数は6409件に上るという。

住民らによると、大規模な米軍の存在によって、レイプや暴行などの犯罪や、飲酒運転事故、騒音などの迷惑行為、航空機墜落事故といった、さまざまな問題に対する怒りが高まっているという。

1995年には、買い物をして歩いて帰宅途中の12歳の女子小学生を米兵3人が誘拐し、暴行を加え、レイプする事件があった。

2025年には、米海兵隊員が日本人女性の首を絞め、性的暴行を加えた罪で有罪判決を受けた(海兵隊員は控訴)。

沖縄で暮らす平野敏子さん(65)は、今回の事件について、「容疑者が米海兵隊員だったことを考えると、個人の犯罪としてだけ扱うのは違うと思う。沖縄では米軍基地の存在そのものが、事件・事故や治安、基地負担の問題と長年結びついてきたからです」とBBCに話した。

息子2人がいる宮城ひとみさん(48)は、「私たちの暮らす沖縄は、戦後80年がたってもこんなにも安心できない場所なのかと、言葉を失っています」とBBCに心境を述べた。

「『再発防止』という言葉も、もう何度聞いたでしょうか」

「沖縄は戦中も戦後も、望まない選択を背負わされてきました。それでも私たちは、安心して暮らせる沖縄を願い、声を上げることをやめません」