レバノンでイスラエル兵がイエス・キリスト像を破壊、怒り広がる

迷彩服とヘルメット姿の人物が大きなハンマーで、逆さに倒されたイエス・キリストの像の顔を叩いている

画像提供, Reuters

画像説明, イスラエル軍は、レバノン南部で撮影されたというこの画像が本物だと認めた
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ヨランド・ネル中東特派員(エルサレム)

レバノン南部で、イスラエル兵が大型ハンマーでイエス・キリストの像を殴っているように見える画像がインターネットで広く拡散され、強く非難されている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、この出来事に「衝撃を受け、悲しんでいる」と述べた。ギデオン・サール外相は、「この件について謝罪する。気持ちを傷つけられたすべてのキリスト教徒に謝罪する」と話した。

地元住民によると、この像はデベル村郊外の住宅の外に設置されていたもの。デベルは、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦争の中でも、住民が残っている数少ない村の一つだという。

デベルのカトリック教会の責任者、ファディ・フライフェル神父はBBCに対し、「私たちの聖なる象徴である十字架、そしてすべての宗教的象徴への冒涜(ぼうとく)を全面的に拒否する」と述べた。

さらに、「これは人権宣言に反し、文明性を反映していない」と語り、過去にも同様の行為が起きていたと主張した。

イスラエル軍は、ソーシャルメディアで拡散している画像が本物だと認め、この出来事を「極めて深刻に受け止めている。また、当該兵士の行動は、我々の部隊に求められる価値観とは完全に相いれないと強調する」としている。

イスラエル国防軍(IDF)は、関与した人物に対して「適切な措置」を取るとしたうえで、「像を元の場所に戻す」ため、キリスト教コミュニティーと協力していると付け加えた。

イスラエルとレバノンは17日、アメリカの仲介で一時的な停戦で合意したが、現在も数千人のイスラエル兵がレバノン南部の広範な地域を占領している。

この停戦により、IDFとヒズボラの間で続いていた6週間の戦闘は一時停止されたが、双方は互いに停戦違反があったと非難し合っている。

アメリカでも非難、ネタニヤフ氏は英語で説明

イエス像攻撃のニュースを受け、アメリカのマイク・ハッカビー駐イスラエル大使はソーシャルメディアに、「迅速で厳しく、かつ公的な措置が必要だ」と投稿した。ハッカビー氏は、キリスト教バプテスト派の牧師でもある。

アメリカの右派コメンテーターたちは、イスラエル兵とイエス像が写った写真を次々と非難した。かつてドナルド・トランプ米大統領の顧問だったマット・ゲイツ元連邦下院議員は、写真を再投稿したうえで「恐ろしい」と書いた。

マージョリー・テイラー・グリーン前連邦下院議員もこの写真を共有し、「これが、私たちの税金と武器を毎年何十億ドルも使っている『最大の同盟国』だ」と書いた。

世論調査によると、アメリカにとって最も重要な同盟国のイスラエルに対する支持はこのところ、アメリカ国内で低下している。

米ピュー研究所が最近行った調査では、アメリカの成人の60%がイスラエルに否定的な見方を示しており、前年の53%から増加した。

3月には、イースター(復活祭)に向けた「枝の主日」の礼拝に参加しようとしたカトリック教会のエルサレム教会トップが、聖墳墓教会に入るのをイスラエル警察によって阻まれ、国際的な抗議が起きた。イスラエル警察は、イランとの戦争における安全上の懸念が理由だと説明した。

アメリカのハッカビー大使はこの出来事について、「不幸な行き過ぎで、すでに世界中で大きな影響を及ぼしている」と述べた。また当時、イスラエルでは宗教集会は最大50人までに制限されていたが、教会指導者の入場を拒否した判断は「理解も正当化も難しい」としてきた。

エルサレムを拠点とし、同地での宗教間関係の改善を目指すロッシング・センターは、2025年発表の報告書で、「このところキリスト教に対する公然とした敵意が急増」していると指摘。その背景として、「分極化と、ウルトラナショナリズムの潮流が、引き続き深まっている」と説明した。

ネタニヤフ首相がイエス像について投稿した文章は英語で書かれており、「イスラエルのキリスト教徒人口は、中東の他の地域とは異なり、繁栄している」と述べていた。

ネタニヤフ氏は続けて、「イスラエルはこの地域で唯一、キリスト教徒の人口と生活水準が共に成長している国だ。イスラエルは中東で唯一、すべての人の信教の自由を尊重している場所だ」と強調した。

ヒズボラは、イスラエルとアメリカが2月末にイランに対する戦争を開始した2日後、イランを支援するためとして、イスラエルへのロケット弾発射を開始した。

イスラエルは3月2日にヒズボラへの軍事作戦を開始。レバノン当局によると、これまでに100万人以上のレバノン人が家を追われ、子ども177人と医療従事者100人を含む2290人以上が殺されたという。一方、イスラエル当局によると、同じ期間にヒズボラの攻撃でイスラエル兵13人と民間人2人が殺害された。