オランダ、大量の金準備を北米からイギリスに移す 地政学的不安を理由に

きれいに積み重ねられ、ピラミッド型を形成している金塊の写真

画像提供, Reuters

画像説明, 今回の金の移動では、大部分が米ニューヨークで売却され、英ロンドンで買い戻される形が取られた。それでも27トンほどが現物輸送された
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ヘンリー・ムーア

オランダ中央銀行(DNB)は2日、アメリカとカナダで保有していた数十億ドル相当の金をイギリスに移したと発表した。「地政学的な不安の高まり」が理由としている。

DNBによると、北米で保有していた計86トンの金準備を、数カ月に及ぶ複雑な動きによって運び出した。

それらの金は現在、英中央銀行イングランド銀行で保管されており、「危機的な状況で」より容易に取引できるようになっているという。

DNBのオラフ・スレイペン総裁は、今回の措置について、「強靭(きょうじん)さと備えを強化するために必要なもの」と説明した。

この動きの背景には、アメリカとカナダの間で貿易紛争が続いていることがある。両国は貿易交渉の決裂後、互いに新たな関税を課すと発表している

どのように運んだのかは不明

DNBの説明では、今年3~8月に27トンの金塊を米ニューヨークとカナダ・オタワからオランダ・ザイストへ運んだ。

その後、同程度の量と質の金をロンドンに移した。金塊を溶かす必要はなかったという。

これほど大量の金がどのように大西洋を越えて運ばれたのかは、明らかになっていない。

残りの金については、ニューヨークで売却し、ロンドンで買い戻す形で移動したという。

DNBは発表で、「売買と現物輸送を組み合わせることで、このような複雑な金の現物移送のリスクを分散できた」とした。

DNBは、「地政学的な不安」が具体的に何を指しているのか、明らかにしていない。

アメリカ経済は、イランとの戦争が続く中でが先行き不透明な状態にあり、世界貿易に影響を及ぼしている。

一方、カナダの経済も、アメリカの追加関税によって大きな打撃を受けている。アメリカは、鉄鋼、アルミニウム、木材、自動車などのカナダの主要産業に関税をかけている。さらに8月には、約280億カナダドル(200億米ドル、約3兆2000億円)相当のカナダ製品に対し、50%の追加関税を課すと発表した。

DNBは、イングランド銀行(英中央銀行)で金準備を保有することについて、同銀行にある金は「世界で最も取引しやすい金とみなされている」ことから、アメリカやカナダで金準備を保管するより、危機の際の対応が容易だとしている。

DNBによると、2日の発表の前は、金準備の31.3%をニューヨークで、19.7%をオタワで、それぞれ保有していた。

今回の措置により、アメリカとカナダにおけるオランダの金準備の保有比率は、共に18.5%に下がった。一方、ロンドンでの保有比率は18.1%から32.1%に増した。オランダ国内での保有比率は30.8%となった。

オランダの金の総保有量は、2025年末時点で612.4トンとなっており、その価値は722億ユーロ(約13兆2500億円)とされる。