英下院、前大使の審査めぐるスターマー首相の答弁について採決へ 議会に誤解を与えたかどうか

画像提供, イギリス下院
ケイト・ワネル政治記者、リチャード・ウィーラー政治記者
イギリス下院のリンジー・ホイル議長は27日、ピーター・マンデルソン前駐米大使の任命審査をめぐるキア・スターマー首相の下院答弁が、議会をミスリードして誤解させるものだったかどうか、28日に下院で審議と採決を行うことを認めた。
ホイル議長は、この問題に関する審議を認め、下院倫理基準・特権委員会が調査するかどうかを下院議員が採決して決定すると述べた。
マンデルソン卿をイギリスの駐米大使に選んだ際の適格性の審査が「適正な手続き」を踏んだのかについて、また外務省の担当者に「一切の圧力」を加えていないと主張した点について、首相答弁が議員を誤解させたとの非難を、スターマー首相は否定している。
閣僚規範では、わざと議会に誤解を与えた閣僚は辞任が求められる一方、不注意から誤った答弁をした閣僚には「可能な限り早い時点」での訂正が求められている。
スターマー首相は、首相が議会を誤解させたと非難する動きは、最大野党・保守党による「スタント」だと非難し、与党・労働党の議員に反対票を投じるよう党議拘束する可能性を示した。
27日夜に労働党議員団の集まりで演説したスターマー首相は、「明日は純粋な政局だ。私たちは、それに対して結束して立ち向かわなくてはならない」と述べた。
労働党議員は自由投票ではなく、保守党の動議を否決し特権委員会への付託に反対するよう党議拘束がかかる見通しだと、BBCの取材で分かった。
28日には下院採決のほか、モーガン・マクスウィーニー前首相首席補佐官、外務省のフィリップ・バートン元外務次官など元政府高官らが、下院の外交特別委員会で証言する予定。
保守党のケミ・ベイドノック党首は、スターマー首相がこの問題について「何度も」議会を誤解させたと主張。労働党議員に対し、「良心に従い」、特権委員会による調査を支持するよう呼びかけた。
首相官邸の報道官は、保守党側の主張には「内容がない」とし、政府はマンデルソン卿の大使任命をめぐって「すでに進行中の二つの議会手続き」に「完全な透明性をもって」対応していると述べた。
二つの議会手続きとは、いわゆる「ハンブル・アドレス(謙虚な請願)」と呼ばれる議会手続きでマンデルソン卿の任命に関する文書を公開する手続きと、外交委員会が審査過程を評価するため資料を調べ公聴会を開く手続きのこと。
政府は27日、2025年9月付の書簡を公表し、当時のクリス・ウォーマルド内閣官房長が首相に対し、マンデルソン卿の任命にあたって「適切な手続き」が踏まれたと伝えていたことを明らかにした。
さらに外交問題特別委員会は同日、外務省の安全保障責任者だったイアン・コラード氏と協議して外務省が作成した文書も公表した。そこには、マンデルソン卿の審査結果をめぐり、「首相官邸から外務省の事務次官室に定期的な連絡があった」ため、コラード氏が「結論を素早く出すよう圧力を感じていた」と書かれている。
一方で、コラード氏は「首相官邸の同僚と直接話したわけではなく」、また「その圧力が、自分やチームが下した専門的な判断に影響を与えたとは評価していない」とも付け加えられている。
労働党は下院で過半数を占めているため、調査を開始するには、同党の一般議員の相当数が調査に賛成するか、棄権に回る必要がある。
この事態にあたって閣僚たちが労働党議員に電話をかけ、首相を支持し、倫理基準・特権委員会への付託に反対するよう説得していることが、BBCの取材で分かった。
特権委員会は、下院議員が議会規則に違反したかどうかを調査できる。同委員会は2023年6月には、新型コロナウイルス流行中に首相官邸で行われたパーティーをめぐり、当時のボリス・ジョンソン首相が議員を誤解させる答弁をしたと判断した。
27日の審議開始時にホイル議長は、保守党党首を含む「多数」の議員が調査実施の採決を認めるよう要請してきたと述べた。そのような採決の実施を「限定的」なものにとどめる「門番」が自分の役割で、案件の是非について見解を示すものではないと強調した。
28日の動議と審議に先立ち公表された議事日程表によると、議員らは、マンデルソン卿の任命にあたり「完全な適正手続き」が踏まれたとする首相の発言や、「この任命について誰からも圧力を受けていないことをオリー・ロビンス(当時の外務次官)は極めて明確にしていた」、「本件に関してはいかなる圧力も一切なかった」という首相の説明について、確認を求められる。
マンデルソン卿は2024年12月、詳細な審査の実施より先に、駐米大使就任が発表された。2025年2月10日に正式に就任したものの、アメリカの性犯罪者ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)とのつながりを理由に、就任から7カ月後の昨年9月に大使を解任された。
首相はこの任命について謝罪したが、身辺審査の手続きが拙速だったのではないかとの批判が続いている。
保守党のベイドノック党首は、任命手続きにおいて「完全な適正手続き」が踏まれたと議員に説明した首相は、議会を誤解させたと述べた。また、マンデルソン卿をイギリス大使として承認するにあたり、公務員組織に対して「いかなる圧力も一切存在しなかった」とする首相の主張も疑問視した。
首相に解任されたロビンズ前外務次官は先週、外交委員会に対し、「圧力が絶えず」あったと証言した。ただし、その圧力がマンデルソン卿に大使就任について安全保障の観点から承認するという自分の判断に影響したわけではないとも述べた。
スターマー首相は英紙サンデー・タイムズに対し、「圧力にはさまざまな種類がある」と話した。自分の議会発言を説明しようとしたものとみられる。
「『これはすぐにできるか?』と言うのも圧力だ。これは珍しいものではない。政府の業務に関する、日常的な圧力だ」と首相は述べた。
野党・自由民主党のリサ・スマート内閣府担当報道官は、労働党議員は「党よりも原則を優先し、キア・スターマーを特権委員会に付託することに賛成する必要がある」と述べた。
野党・リフォームUKのナイジェル・ファラージ党首は、首相が下院を一度ならず誤解させたと考えていると述べ、「ボリス・ジョンソンも同じことをしようとして、逃げ切れなかった。キア・スターマーだけが例外である理由はない」と付け加えた。
イングランドとウェールズの緑の党のザック・ポランスキー党首は、首相の行動をめぐって「多くの疑問がある」とし、調査を支持すると述べた。一方で、この問題は「低賃金と物価高騰という有害な組み合わせから、目が離されてしまう、大きな注意散漫要因だ」と指摘した。
外交委員会のエミリー・ソーンベリー委員長(労働党)はBBCラジオの番組で、すでに外交委員会がこの問題を調べているため、特権委員会による「作業の重複」は望ましくないと話した。
ソーンベリー氏は「将来のある時点で、いくつかの疑問が解消されない場合、特権委員会の関与に値するほど重要だと判断される可能性はある」とも述べたうえで、「しかし現時点でその理由があるかというと、地方選を前に得点しようとする人たちがいるという以外、理由はあまり見当たらない」と話した











