【解説】インドに巨額投資する日本企業、中国関連リスクが深まるなか

ユニクロ・ベンガルール店のショッパーを持つ人の写真

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画像説明, ユニクロや無印良品といったブランドは、インドで事業を急拡大している
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ニキル・イナムダー記者(ムンバイ)

インドのピユシュ・ゴヤル商工相は8月24日、日本との貿易・投資関係の拡大を目指し、インド史上最大規模の経済使節団を率いて日本を訪問した。アジア第3位の経済大国であるインドでは現在、日本企業の進出がますます顕著になっている。

ムンバイ、デリー、ベンガルールといた大都市のショッピングモールや繁華街を訪れれば、日本の消費財ブランドが増えていることに気づくはずだ。

ファーストリテイリングの「ユニクロ」や良品計画の「無印良品」、そしてアシックス傘下の高級スニーカー「オニツカタイガー」などは以前からインドに進出していたが、いずれも急速に事業を拡大している。

家具メーカーのニトリは最近、インド市場に参入した。コンビニエンスストアチェーン大手のローソンも進出を予定しており、報道によると、ムンバイを皮切りに、2050年までにインド国内に1万店舗を開設する計画だという。

これは小売業に限った話ではない。外国の金融機関がインドの銀行ポートフォリオから撤退する一方で、日本の金融機関はインドの金融資産を積極的に買収しようとしている。

メガバンクの三菱UFJ銀行は昨年、インドのノンバンク「シュリラム・ファイナンス」の株式20%を3962億インドルピー(約6800億円)で取得する契約を締結し、今年4月に出資を完了した。これはインドの金融セクターにおける、過去最大の外国投資となった。

また、三井住友フィナンシャルグループ傘下の三井住友銀行はインドのイエス銀行の株式24.22%を取得し、筆頭株主となった。

インドでは現在、多国籍企業が海外に置くイノベーション拠点「グローバル・ケイパビリティー・センター(GCC)」が急成長を遂げている。GCCは企業の研究開発(R&D)、企業戦略、人工知能(AI)開発など、事業にとって不可欠な機能を担うが、インドにGCCを置くアジア・太平洋地域の企業では、日本がトップに位置している。

国際会計事務所デロイトの最新報告書によると、すでに100社以上の日本企業がインド国内でこうしたGCCを運営している。

「日本企業は成長のためにインドに目を向けざるを得なくなっている。日本の人口は過去16~17年間にわたって減少傾向にあり、国内需要の減速だけでなく、市場自体の恒久的な縮小が見られる」。スズキ自動車が出資するインパクトファンド「ネクスト・バーラト・ベンチャーズ(NBV)」の創設者ヴィプル・ナス・ジンダル氏は、BBCにこう話した。スズキは今年7月、NBVに2億ドル(約325億円)を出資すると発表した。

青いジャケットドレスを着た高市首相と、インドの伝統服を着たモディ首相が並んで握手をしている

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画像説明, 高市早苗首相のインド訪問中、日本企業は約120件の協定を通じて125億ドルの対インド投資を発表した(7月2日、ニューデリー)

ジンダル氏はまた、日本がこれまで事業を拡大してきた市場は、日本企業にとっての魅力が後退し続けていると指摘する。

「中国への投資は、地政学的緊張と経済情勢の変化によって急減している。アメリカ市場は、関税や国内競争のため以前より難しい状況にある。他の東南アジア諸国の市場規模は限られている」

こうした背景から、インドは日本企業にとって、長期的な事業成長を促進するためのターゲット市場となっている。

日本とインドの経済関係は、2011年に包括的経済連携協定(CEPA)が締結されたことをきっかけに、政府間レベルで急速に発展した。

2014年に就任したナレンドラ・モディ首相はその後、日印関係を「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」に格上げし、インドにおける日本企業の数を倍増させると発表。また、ムンバイ・アーメダバード間を結ぶインド初の高速鉄道を日本の新幹線技術を使って建設するなど、両国関係にとって象徴的なプロジェクトを立ち上げた。

しかし、投資が拡大する現在の局面で事業拡大を牽引(けんいん)しているのは、日本の民間企業だ。

日本の高市早苗首相は今年7月、初めてインドを公式訪問し、モディ首相と会談した。その際に同行した日本企業は、半導体からグリーンエネルギーまで幅広い分野で約120件の協力文書を締結。2兆円規模の投資を発表した。

昨年8月にモディ氏が日本を訪問した際には、石破茂首相(当時)との間で、日本企業が投資今後10年で10兆円をインドに投資する目標を設定した。インドのゴヤル商工相は今回の訪日に際し、この投資目標を予定より早く達成できる可能性があると述べた。

NBVのジンダル氏は、大企業だけでなく、日本の多くの中小企業もインド市場への進出を積極的に検討していると話す。

日本でも有数の製造業の集積地である浜松市は先に、市内の中小企業がインドへ進出する方法を探るため、「インディア・ハママツ・アドバイザリー・コミッティ」を設立した。浜松市は、スズキやホンダ自動車、ヤマハといった企業が生まれた場所でもある。

インドへの関心の高まりは、日本の対中投資の縮小と並行して起こっている。しかし東京大学の西澤利郎特任教授(経済学)、これは「政策当局が主導する中国からインドへの地政学的シフトというよりは、商業的な動機に基づく資本の再配分」の表れだと指摘。「日本企業の自律的な市場多角化戦略」として理解されるべきだとしている。

しかし、日本企業が一斉に中国から撤退しているわけではない。豪シンクタンク「ロウイー研究所」のインド責任者シュルティ・パンダライ氏はBBCに対し、日本企業は「数年にわたるサプライチェーンの混乱と地政学的な緊張を受けて、集中リスクを軽減しようとしている」のだと話した。

インドは、中国関連リスクに対する防波堤の役割を果たしている。しかし、日本の経済安全保障上の優先事項とインドの製造業への野心の間に、最近ますます共通項が増えていると、パンダライ氏は指摘。日本政界の顔ぶれは大きく変わったが、それでも両国関係は強化されているという。

「政権が交代するたびに、目標値は下がるどころか上がってきた。これは両国関係が首脳レベルの外交を超え、双方の官僚機構、企業、そして戦略計画に深く根付いていることを示唆している」

インドの繁華街が夜間にライトアップされている。車が渋滞し、混雑している

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画像説明, 可処分所得の増加に伴い、インドの消費市場は急速に成長している(2025年10月19日、ベンガルール)

外国からの投資が不足しているインド政府にとって、日本の資金はまさに重要な時期にもたらされた。

パンダライ氏によると、インドにとって対中貿易赤字の拡大は深刻な懸念事項となっている。そのため、日印間の協力強化は、長期的にはレアメタルや先端製造業といった分野における中国の影響力を、徐々に低下させる可能性があるという。

しかし専門家らは、この関係を全面的に拡大するには多くの課題があると指摘する。

インドのシンクタンク「オブザーバー・リサーチ・ファンデーション」のプラトナシュリー・バス氏は、「日本は依然として、中国の製造ネットワークに深く組み込まれている。一方、インドの関与はそれに比べると不均一だが、主要セクターにおいては引き続き重要な位置を占めている」と話す。

「この点において、(日印の)経済的相互依存関係は協調的な施策を制限する。こうした施策は、多大な商業的コストにつながるほか、中国からの直接的な経済的報復を招いたりするからだ」

また、インドは依然としてビジネス相手として難しい国だ。

税制上の不確実性、わずらわしい官僚的な手続き、土地や環境に関する認可の遅延などはいずれも、日本人を含む外国人投資家が長年、問題視してきた課題だ。

日本の牧原秀樹元法相は7月、日本が関わる高速鉄道計画の遅延について「100%インド側のせい」とソーシャルメディアで発言。インド人は「とにかく約束を守らない」、「自己利益を最後まで主張し続ける」とも述べ、インド政府の反発を招いた。

中国の国営メディアはこの「亀裂」をいち早く取り上げ、インドの契約履行能力には欠陥があると強調した。

インドが外国資本の持続的な誘致に苦戦している現状を考えると、こうした事例は、インド政府が数々の大型経済・防衛協定を締結する一方で、日本の投資の勢いが途絶えないよう、これまで以上に努力する必要があることを浮き彫りにしている。