英政府、チャゴス諸島の主権移譲を棚上げ、トランプ氏の反発受け

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ジョー・パイク政治担当編集委員
キア・スターマー英首相は、イギリスがインド洋のチャゴス諸島の主権をモーリシャスに移譲する合意を棚上げすると発表した。スターマー氏とドナルド・トランプ米大統領との関係が悪化するなか、同諸島のディエゴ・ガルシア島にイギリスと共同軍事基地を置くアメリカが、正式にこの合意を認めなかったため。
トランプ氏は当初、この計画を支持していたが、最近ではスターマー氏に合意の撤回を求めていた。今年1月にはこの計画を「大いなる愚行」「完全な弱さからくる行動」と非難していた。
イギリス政府関係者は、この合意を完全に放棄しているわけではないとしているが、議会が解散するまでの数週間に、関連法案を成立させる時間がなくなったと述べている。
一方で、5月中旬に行われる「国王の演説」(政府の施政方針演説)に、新しいチャゴス法案が盛り込まれる見通しは立っていない。
関係者によると、この条約を発効させるために法的に必要とされる、アメリカとの正式な交換書簡を、イギリスは依然として受け取っていないという。
イギリスは昨年5月、チャゴス諸島の主権をモーリシャスに移譲することで合意した。この合意では、チャゴス諸島最大のディエゴ・ガルシア島にある英米共同軍事基地の管理権をイギリスが維持し、年間1億100万ポンド(約216億円)で99年間、借り直すことになっていた。
トランプ氏は今年2月、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に「ディエゴ・ガルシアを渡すな」と書き込み、批判的な姿勢を表明。「われわれの偉大な同盟国にとって汚点となる」と主張した。
この発言の前日、アメリカ政府はこの計画を正式に支持すると表明したばかりだった。
政府は2月、合意が一時停止されたことを否定したが、その数時間前には、閣僚の一人が議会で、法案成立の手続きを「一時停止している」と述べていた。
英政府の報道官は、「ディエゴ・ガルシアは、英米双方にとって極めて重要な戦略的軍事資産だ」と述べた。
「その長期的な運用上の安全を確保することは、これまでも、そして今後も、我々の最優先事項だ。これこそが、この合意の全理由だ」、「我々は今も、この合意が基地の長期的な将来を守る最善の方法だと考えているが、合意を進めるのは、アメリカの支持がある場合に限られると、常に述べてきた。我々はアメリカおよびモーリシャスと話し合いを続けている」と、英報道官は話した。
2月末に始まった米・イスラエルとイランの紛争では、イランが自国から約3800キロ離れたディエゴ・ガルシア島の米英共同軍事基地を攻撃目標にしていたことが明らかになっている。

正式にはイギリス領インド洋地域(BIOT)として知られるインド洋のチャゴス諸島は、1814年からイギリスの支配下にある。
イギリスは1960年代後半に、アメリカにディエゴ・ガルシア島での軍事基地建設を提案し、数千人の住民を島から強制的に移住させた。以降、住民の帰還は認められていない。
チャゴス諸島の出身者の一部はモーリシャスやセーシェルに移住したが、一部はイギリスに移住し、主にウェストサセックス州クロウリーなどに住んでいる。
多くのチャゴス諸島出身者は、この合意を裏切りだと受け止めており、将来、故郷に戻ることができるよう、イギリスが諸島の主権を維持することを望んでいる。
合意を強く批判してきた最大野党・保守党と野党・リフォームUKは、棚上げの発表を歓迎した。
保守党のケミ・ベイドノック党首は、「もしキア・スターマーのチャゴス降伏が、今その正当な居場所、つまり歴史のゴミ捨て場に収まったのなら、それは保守党が初日からこれに反対する闘いを主導してきたからだ」と述べた。
「(合意棚上げに)これほど時間がかかったこと自体、すでに我々のものだった重要な軍事基地を使用するために350億ポンドを支払い、イギリスの主権領土を引き渡そうとした首相に対する、いっそう痛烈な告発だ」
リフォームUKのナイジェル・ファラージ党首は、「これは素晴らしい知らせ、待ち望まれていた知らせだ。いま政府は、重大な過ちを正し、チャゴス諸島出身者が故郷に完全に再定住できるよう支援しなければならない」と述べた。
野党・自由民主党の外務担当報道官を務めるキャラム・ミラー議員は、「チャゴス合意の扱いは、保守党政権下での開始から、現在の労働党政権下に至るまで、完全に混乱している」と述べた。
また、「だが、トランプ氏の気まぐれな対応は、彼がいかに信頼できない人物かを示している」と指摘した。









