英国王夫妻、米公式訪問でエプスティーン元被告の被害者と面会の予定なし

並んで話すチャールズ国王とトランプ氏。両者ともスーツ姿

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画像説明, イギリスのチャールズ国王(左)とトランプ米大統領(2025年9月、英ウィンザー)
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ショーン・コクラン王室担当編集委員、クリス・グレアム記者

イギリスの国王チャールズ3世とカミラ王妃は、今月下旬にアメリカを国賓として訪問する際、性犯罪者のジェフリー・エプスティーン元被告(故人)の被害者と面会しないことが、国王夫妻の公務を管理するバッキンガム宮殿の関係者によって明らかになった。バッキンガム宮殿が14日、訪米の詳細を公表した。元被告をめぐっては、国王の弟による交流ぶりが問題視されている。

今月27~30日の訪米中、カミラ王妃は一部の行事で、家庭内暴力(DV)や女性への暴力に反対する団体の代表者らと面会する予定だ。

チャールズ国王の弟アンドリュー・マウントバッテン=ウィンザー元王子とエプスティーン元被告の関係はスキャンダルとなっており、国王らに対しては今回の訪問で元被告の被害者らと面会すべきだとの声が高まっている。

こうした声は、米連邦下院のロー・カンナ議員や、元被告の被害者の1人であるリサ・フィリップス氏、そしてアンドリュー元王子による性被害を訴えていたヴァージニア・ジュフレー氏(故人)の家族らから上がっている。

しかし王室関係者によると、こうした面会は実現しない見通し。元被告が関係した事件をめぐる法的手続きを妨げ、被害者に対する正義の実現を止めてしまう可能性があるからだという。

「私たちは被害者の立場を十分に理解し、尊重している。しかし、現在進行中の警察の捜査や評価、そこから生じ得るあらゆる法的措置に影響を与える可能性のあることは、正義を求める被害者自身の不利益になるという、明確な立場を改めて述べるしかない」と、この関係者は述べた。

カミラ王妃は、長年DV問題に取り組んできた。先にセント・ジェームズ宮殿で開かれたレセプションでの演説は、エプスティーン元被告の被害者に言及したものと受け止められている。

王妃はその演説で、「語ることができなかった人や、信じてもらえなかった人を含め、あらゆる種類の暴力のあらゆる被害者に伝えたい。あなたは一人ではない。どうか、そのことを知ってほしい」と語った。

連邦議会での演説や、9/11記念施設の訪問

国王夫妻の国賓訪問には、以下などが予定されている。

国王と王妃は首都ワシントンに到着した後、2日間にわたってティーパーティー、ガーデンパーティー、儀礼的な軍事閲兵などに臨む。国王はドナルド・トランプ米大統領と非公開で会談し、大統領はホワイトハウスで国賓晩さん会を主催する。

国王はワシントン滞在中、連邦議会で演説する。これは今回の訪問における最大の外交機会となる見通しだ。

国王と王妃はニューヨークで、2001年9月11日にあった同時多発攻撃の慰霊施設を訪れ、初動対応者らと面会する。ハーレムでの地域プロジェクトへの参加、くまのプーさんの誕生100年を振り返る識字率向上イベント、ビジネス関連のイベント、華やかなレセプションへも出席する。

熱心な環境運動家でもある国王は、ヴァージニア州の国立公園を訪れ、先住民と面会し、アパラチア地域の文化に触れる。独立250周年を祝う地域の祝賀行事が行われる。

今回の国賓訪問の詳細を明らかにする中で、バッキンガム宮殿の報道官は、現在の国際的な緊張に言及した。

「この訪問は、イギリス、アメリカ、そして同盟諸国が世界各地で直面している課題を認識するものでもある。イギリスの国益の下、これらの課題に共に対処する中で、2国間関係を再確認し、刷新する機会となる」

チャールズ国王は、連邦議会での演説でこうした課題に触れる予定だという。イギリスの君主が米議会で演説するのは、1991年9月に先代のエリザベス2世が行って以来、2度目となる。

議場の演台の前に立ち演説するエリザベス女王。オレンジ色のドレスと帽子を着用し、白い手袋をはめている。周囲では議長や議員らが起立して女王に拍手を送っている。

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画像説明, エリザベス女王は1991年の訪米の際に連邦議会で演説した

国王とトランプ氏による会談に加え、カミラ王妃と米大統領の妻メラニア・トランプ氏も、一緒に公的行事に臨む。

アメリカ訪問後、国王は北大西洋の英領バミューダを訪問し、3日間滞在する。国王がイギリスの海外領土を訪れるのは即位後初となる。

バッキンガム宮殿によると、国王はバミューダの歴史に関する博物館の展示を訪れ、「大西洋をまたぐ奴隷貿易とバミューダのつながりについて理解を深める」予定。

さらに、地元の生息環境を保全する「生きた教室」に参加する若者たちと面会する計画もあるという。

政治的な緊張が高まる中での訪問

君主による公式訪問はイギリス政府によるもので、国王は外務省を代表して訪問する。

外務省は、今回の訪問がアメリカの独立250周年を記念し、「共有する繁栄と安全、そして歴史」に基づくパートナーシップを祝うものになるとしている。

トランプ氏はこれまでも英王室を高く評価している。今回の公式訪問が発表された際には、ソーシャルメディアに「とても尊敬している国王との時間を楽しみにしている。素晴らしいことになる!」と書いていた。

一方でこの訪問は、イランでの戦争をめぐってトランプ氏がキア・スターマー英首相を批判するなど、英米関係が異例なほど緊張している時期と重なっており、チャールズ国王は難しい外交の舞台へと向かうことになる。

スターマー首相は、両国政府の間に緊張が生じていることを公に認めている。先には、トランプ氏が各国に課した関税や、デンマーク領グリーンランドをめぐる脅しについて、「成熟した同盟関係とは、違いが存在しないふりをすることではない。その違いについて直接、敬意をもって、成果を重視して対処することだ」と述べている。

しかし王室関係者らは、チャールズ国王が「多くの政権や、そしてもちろん多くの治世を超えて続いてきた」英米関係を支えるうえで、特別な役割を果たすことができるとみている。

英外務省の報道官の1人も、国王の訪問が両国関係の強化と、その長期的な利益の保護に貢献し得る点を強調した。

「確かに我々は緊密な同盟国であるとともに、意見が違うこともある。だからと言って、この関係から双方が何十年も得てきた価値が損なわれることはない」と、この報道官は述べた。

英王室によるアメリカ訪問は、政治的混乱の中でもたびたび行われてきた。

エリザベス女王は1957年、深刻な影響を残したスエズ危機の直後に、ドワイト・アイゼンハワー大統領を訪問した。この時の女王の役割は、分断された英米関係の修復を助けることだった。

女王はまた、アメリカがリチャード・ニクソン大統領の辞任とウォーターゲート事件の余波に揺れていた1976年にも、独立200周年を記念して訪米している。