英政府、フォークランド諸島の主権を強調 米政権がイラン戦争めぐる不満から「立場見直し」と報道され

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イギリスの首相官邸は24日、南大西洋にあるフォークランド諸島をめぐり、同国の領有権の主張についてアメリカが立場を見直す可能性があると報道されたのを受け、主権は「イギリスにある」と述べた。

ロイター通信が報じた米国防総省の内部メールによると、アメリカ政府は、イランとの戦争を支持しなかったとみなした北大西洋条約機構(NATO)同盟国を処罰することを検討していたとされる。

検討内容には、フォークランド諸島をめぐる立場の転換のほか、イランとの戦争に反対したとして、スペインのNATO資格停止を求める選択肢も含まれていた。BBCニュースはこのメールを確認できていない。

国防総省のキングズリー・ウィルソン報道官は、メールの存在についてコメントしなかった一方、「同盟国がもはや張り子の虎ではなく、それぞれの役割を果たすようにするため、大統領が実行可能な選択肢を確実に持てるようにする」と述べた。

また、「トランプ大統領が述べてきたように、アメリカがNATO同盟国のために行ってきたすべてのことにもかかわらず、同盟国は我々のためにそこにいなかった」と付け加えた。

イギリスの海外領土であるフォークランド諸島については、現在もイギリスとアルゼンチンの間で主権をめぐって論争となっている。

英首相官邸の報道官は今回の報道について問われると、「フォークランド諸島ではこれまで、圧倒的多数がイギリスの海外領土として残ることを支持してきた。我々は島民の自己決定権、そして主権がイギリスにあるという事実を、常に支持してきた」と述べた。

キア・スターマー首相の報道官も、政府は「イギリスの立場についてこれ以上明確にすることはできない」としたうえで、「主権はイギリスにあり、島民の自己決定権が最優先だ」と述べた。

さらに、「我々は歴代のアメリカ政権に対し、この立場を明確かつ一貫して表明してきた。これが変わることはない」とした。

与党・労働党の元安全保障担当閣僚であるウェスト卿は、BBCラジオ4の番組「ザ・ワールド・トゥナイト」で、フォークランド諸島をめぐる米国防総省の情報流出は「かなり異例だ」と指摘。「理解の欠如」を示していると語った。

フォークランド紛争当時、英海軍のフリゲート艦アーデントの艦長を務めていたウェスト卿はまた、ピート・ヘグセス米国防長官を「鈍い」と表現し、NATOについて全く理解していないと非難した。

「ヘグセスは、NATOはアメリカのために何もしてこなかった、アメリカはNATOのために多くのことをしてきた、と語っている。しかし、集団防衛を定めた第5条が発動されたのは一度だけで、それはNATOがアメリカを防衛するためだった」と述べた。

さらに、「残念ながら、彼は本当に鈍い。こうした多くの事柄について、あまり良い知識を持っていないようだが、そう言うのもばかばかしい」と語った。

NATO条約の第5条は、加盟国の1国に対する武力攻撃は、すべての加盟国に対する攻撃とみなされると定めている。そうした攻撃に対し他の加盟国は、「北大西洋地域の安全を回復し、および維持するため、兵力の使用を含む、必要と認める行動」をとるとしている。

これまで第5条が発動されたのは、2001年9月11日の米同時多発攻撃の直後の一度きりだ。

これまでのアメリカ政権は、フォークランド諸島に対するイギリスの実効支配を正式に認めてきたが、主権についての公式な立場は取ってこなかった。

フォークランド諸島政府は声明で、「フォークランド諸島は、私たちの自己決定権を支持し擁護するというイギリス政府の約束に、完全な信頼を置いている」と述べた。

英最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首は、今回の報道内容は「まったくのナンセンスだ」と述べ、「我々は確実にフォークランド諸島を支持しなければならない。あれはイギリス領だ」と付け加えた。

リフォームUKのナイジェル・ファラージュ党首は、「これは完全に交渉の余地がない。フォークランド諸島の主権について議論することすらあり得ない」と述べた。

また、年内にアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領と会談する際に、この問題を持ち出すつもりだとも語った。

自由民主党のエド・デイヴィー党首は、4月下旬に予定されている英国王チャールズ3世のアメリカ訪問を中止すべきだと、あらためて主張した。

「この信用できない有害な大統領は、わが国を侮辱し続けることはできない」

今回の米当局のメールをめぐる報道は、チャールズ国王とカミラ王妃がアメリカを国賓訪問し、ホワイトハウスでトランプ氏と会談する予定の3日前に出た。

ホワイトハウスはこの報道についてまだコメントしていないが、外交的緊張が高まる中、アメリカとイギリスの間に新たな摩擦を生む要因となる可能性がある。

トランプ氏はこれまで、イランとの戦争でイギリスが示した支援の水準に「満足していない」と述べてきた。一方で、キア・スターマー首相は、イギリスはより広範な紛争に引き込まれることはないと、繰り返し述べている。

一方、アメリカが同盟からのスペイン追放を働きかける可能性があるとの報道について、NATOの当局者は、条約では「NATO加盟の資格停止や除名を定める規定は想定していない」と述べた。

これに先立ち、スペインのペドロ・サンチェス首相は、「我々は電子メールを基に仕事をすることはない。今回のことでは、アメリカ政府による公式文書と公式の立場に基づいて行動する」と述べていた。

フォークランド諸島は1833年以降、イギリスの統治下にある。一方で、アルゼンチンは歴史的に同諸島はスペイン王室から継承したものであり、また南米大陸に近接していることを理由に、同諸島に対する権利があると主張してきた。同諸島はアルゼンチン本土の東、約483キロの位置にあり、同国の公用語であるスペイン語ではマルビナス諸島と呼ばれる。

1982年には、フォークランド諸島をめぐってイギリスとアルゼンチンが10週間にわたり衝突した。当時アルゼンチンの軍事独裁者だったレオポルド・ガルチェリ将軍が、同諸島への侵攻を自国軍に命じたことがきっかけだった。

これに対し、当時のマーガレット・サッチャー英政権は、諸島を奪還するため海軍の任務部隊を派遣した。

アルゼンチン軍は最終的に降伏したが、同国は現在もフォークランド諸島の主権を主張している。

この紛争では、アルゼンチン軍の649人、イギリス軍の255人が死亡したほか、フォークランド諸島の住民3人が命を奪われた。

その後、フォークランド諸島の住民は圧倒的多数が、イギリス領として残る意向を示してきた。

2013年に実施された住民投票では、有権者1672人のうち3人を除いて全員がイギリス海外領土としての継続に賛成した。投票率は90%を超えた。

イギリスの歴代政権は、国連憲章に基づく国際法の下で、同諸島の住民には自己決定権があるとの立場を長年にわたり維持している。

これに対し、アルゼンチンのパブロ・キルノ外相は24日、Xへの投稿でこの立場を否定。フォークランド諸島に住む人々は、国連によって人民として認められたことは一度もないと主張した。

キルノ外相は、「アルゼンチンはマルビナス諸島に対する主権的権利を再確認する」、「アルゼンチン共和国は、この主権紛争について平和的かつ最終的な解決を見いだすことを可能にする、イギリスとの2国間交渉を再開する意思があることを、あらためて表明する」と述べた。

トランプ氏の盟友でもあるアルゼンチンのミレイ大統領はこれまで、この紛争の解決には数十年かかるとの見方を示している。また、「主権を要求して胸を張るだけで、何の成果も出していない」として、アルゼンチンの政治家たちを批判していた。