レバノンで記者殺害 イスラエルが空爆で記者を標的にしたとレバノン首相が非難

この記事は約 8 分で読めます

レバノンのナワーフ・サラーム首相は23日、レバノン南部で前日にイスラエルの空爆によって記者1人が殺害され、別の記者1人が負傷したことを受け、イスラエルの行為は戦争犯罪だと非難した。

イスラエルによる攻撃で、レバノンの新聞社に勤めていたアマル・ハリル記者が死亡し、フリーランスのフォトグラファー、ゼイナブ・ファラジ記者が負傷した。

レバノン当局によると、記者たちが車で走行中、前を走っていた車両が攻撃され男性2人が死亡した。そのため記者2人は住宅に避難しようとしたものの、イスラエル国防軍(IDF)はその2人をわざと標的にしたと、レバノン当局は指摘している。

レバノン当局はまた、タイリ村で記者のもとに向かおうとした標識付きの救急車を、IDFが意図的に攻撃したと非難した。

これに対してIDFは、救助隊が現場に到達するのをIDFが妨害したとのレバノン側の主張を否定し、自分たちは記者を標的にしていないと述べた。

ハリル記者とファラジ記者は、一緒に移動していた。死亡した男性2人について、当局は名前を公表していない。

レバノンのサラーム首相はソーシャルメディアで、「記者を標的にすること、救助隊のアクセスを妨害すること、さらには救助隊が到着した後でさえ、その場所を再び標的にすることは、明確に戦争犯罪に該当する」と指摘した。

サラーム首相は、イスラエルがレバノン南部でメディア関係者を繰り返し標的にしているとして、それはイスラエルによる「確立された手法」だと非難した。

首相はハリル記者の家族に哀悼の意を表し、レバノンは「適切な国際的な場でこれらの犯罪を追及する」と述べた。

IDFは声明で、自分たちは「ジャーナリストを標的にせず、部隊の安全を維持しつつ、(ジャーナリストへの)被害を軽減するよう行動している」と述べた。

IDFは、「ヒズボラが使用していた軍事施設から出発した」2台の車両を特定したとして、そのうち1台は「前方防衛線」を越え停戦条件に抵触し、イスラエル軍の部隊にとって「差し迫った脅威」となる形で接近したのだと説明した。さらに、イスラエル空軍が車両の1台を攻撃し、「複数の人物が逃げ出した建物も攻撃した」としている。

対するレバノン保健省は、最初の空爆から逃れて近くの家に身を寄せていたハリル記者とファラジ記者をIDFが「追跡」し、避難していた家を標的にしたと述べた。さらに、レバノン赤十字の救急車が負傷者の治療に到着した際、イスラエル軍がスタングレネードと銃撃を向け、到達を妨げたと声明で述べた。

レバノン保健省は、「これは、民間メディアの活動家として知られる市民に対する救助活動を妨害すると同時に、赤十字の標章が明示された救急車を標的にしたもので、明白な二重の違反に当たる」と非難した。

国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」のクレイトン・ワイマー事務局長は、複数の記者や「国境なき記者団」がIDFに対し、ハリル記者のもとに救急車が到達できるよう対応を求めていたのだと明らかにした。

「赤十字は、イスラエルによる継続的な爆撃のため通行できないと知らせてきた。記者が意図的に標的にされて殺害されたとみられる事態において、輪をかけるように冷淡に対応したことになる」と、事務局長は述べた。

「国境なき記者団」の声明によると、ファラジ記者はその後、死亡した2人の遺体とともに搬送された。レバノン市民防衛当局によると、ハリル記者の遺体は後に救急隊が収容した。

23日午前には多くの記者がレバノンの首都ベイルートの殉教者広場に集まり、黙とうしてハリル記者を追悼した。

アル・アクバル紙の1面には、マイクを手に笑顔を見せるハリル記者の写真が掲載された。同紙は、ハリル記者を「人道的および職業的な責務において揺るぎなかった」と書いた。

英紙ガーディアンで中東を担当するウィリアム・クリストウ記者は、ソーシャルメディア「X」への投稿で、ハリル記者は「プロで、親切で、献身的な記者で、現場で会うのがいつも楽しみだった」と書いた。

IDFは、空爆の結果として記者2人が負傷したとの報告を認めたが、救助隊の現場到着は阻止していないと強調している。ハリル記者の死亡については認めていない。

アメリカに拠点を置くジャーナリスト保護委員会(CPJ)は、ハリル記者の死亡は「とんでもないこと」だと述べた。

CPJ地域ディレクターのサラ・クーダ氏は、「同一地点への攻撃を繰り返し、複数の記者が避難していた地域を標的にしたこと、医療および人道援助のアクセスを妨害したことは、国際人道法の重大な違反に当たる」と述べた。

CPJによると、ハリル記者は2024年の時点で、レバノン南部から離れるよう警告する「イスラエルによる死の脅迫」の標的になったと、地元メディアが報じていた。CPJは、2024年のこの報道から記者が「意図的に標的にされた」のではないかと、「深刻な懸念」が生じていると述べた。

今月初めには、レバノンで個別のイスラエル空爆により、記者2人が殺害された。死亡したのは、ラジオ局サウト・アル・ファラーのガーダ・ダイエフ司会者と、武装組織ヒズボラと関係のあるアル・マナールTVの記者・司会者スザン・ハリル氏。

3月末にはレバノン南部ジェジーンで、イスラエル軍がレバノン人記者を標的に攻撃し、記者3人が殺害されたと雇用主が明らかにした。死亡したのは、ヒズボラ系アル・マナールTVのアリ・ショエイブ記者、別のテレビ局「アル・マヤディーン」に所属するファティマ・フトゥーニ記者と、ファティマ氏の兄弟でカメラマンのムハンマド・フトゥーニ記者。

IDFは当時、ショエイブ記者とムハンマド・フトゥーニ記者を殺害したことを確認し、ヒズボラの軍事部門に属する「テロリスト」だと説明した一方、女性記者も死亡したとの報告を認識していると述べた。

レバノンのジョセフ・アウン大統領は、この攻撃を「大胆な犯罪」だと非難。記者というのは「結局のところ、専門的な職務を遂行する民間人」であって、民間人を標的にすることは国際法の「最も基本的な規則」を破るものだと指摘した。

レバノン当局によると、現在の戦争が始まって以降、イスラエルのレバノン攻撃で少なくとも2475人が殺害され、7500人以上が負傷した。この数字は民間人と戦闘員を区別していない。少なくとも女性274人と子ども177人が含まれている。

レバノン保健省は先週、戦争中のイスラエル攻撃で少なくとも医療従事者100人が死亡し、救急車や医療施設に対するイスラエルの攻撃が120件以上記録されたと述べた。

CPJによると、イスラエルの攻撃によりレバノンでは記者7人が死亡している。

対するイスラエル当局は、3月2日以降、ヒズボラの攻撃によりイスラエル国内で民間人2人が死亡し、レバノンでの戦闘でイスラエル兵13人が死亡したとしている。

ヒズボラとイスラエルは互いに停戦合意違反を非難している。

IDFは22日、レバノン南部でヒズボラがイスラエル部隊を攻撃したと述べた。AFP通信によると、ヒズボラは同日、「イスラエルの敵による停戦違反への対応」として、レバノン南部でイスラエルの標的を攻撃したとする声明を4回出した。

マルコ・ルビオ米国務長官が14日に米首都ワシントンで主催した会合には、レバノンとイスラエルの代表が招かれ、両国にとって30年ぶりとなる直接の高官級接触が実現した。

米国務省によると、この協議後に両政府は「恒久的な安全および和平合意に向けた誠実な交渉を可能にする」ため、17日に始まった10日間の敵対行為停止を実施することで合意。23日には両政府がさらに協議した後、ドナルド・トランプ米大統領が、イスラエルとレバノンの停戦が3週間延長されると発表した。